平均律と純正律

作成2010.12.28

■発生練習の終わりにカデンツァを歌うが、どうもハモらない。
トップの「ミ」が低い、バリトンの「ソ」が低い、ベースの「ファ」が低いと指摘され、ピアノをたたかれて実証されるが、
どうも腑に落ちない。
そこで、これは、ピアノの平均律と、声楽の純正律の差から来る相違ではないかと、検証を試みた。

■平均律とはオクターブを12等分比に分割した音階で、12音の比率はどこをとっても同一である。
言い換えれば、オクターブは12個の半音から成っている。
したがって、12個の調整が調律無く演奏可能である。
17世紀に西洋で生まれたとのこと。バッハの「平均律クラビーア曲集」は有名
各12音の周波数を数式で現すと、

ここに、
fi;基音から数えてi番目の音の周波数
F0;基音の周波数(普通A4を440Hzとする)

■これに対して純正律は自然界の音を基本としている
風が小枝に当たる音、波が砕ける音、太鼓の音、笛の音などである。
その構成は倍音から成っている。
倍音とは基本音に対する整数倍の周波数の音である。
最も単純なのが、糸を張ってはじいて音を出す場合に、山が1つ出来る場合を基本とすると、
中間に節が1つ出来ると2倍音、2つ出来ると3倍音、以下4倍、5倍など下図のようになる。

■平均律と純正律の周波数

純正律における西洋音楽の音階と、平均律で計算された周波数をA4=440Hzとして示すと

倍率 音名 純正律周波数 平均律周波数 違い
1 C4 264 261.6 1.009
9/8 D4 297 293.6 1.011
5/4 E4 330 329.6 1.001
4/3 F4 352 349.2 1.008
3/2 G4 396 392 1.010
5/3 A4 440 440 1
15/8 H4 495 493.9 1.002
2 C5 528 523.2 1.009

わずかにずれている。
この程度ずれは、普通の人では関知出来るか出来ないか、ハーモニーを作ると解り易いと言われている。
ピアノは打撃音で倍音が多いので判別は難しいが、ビブラートを無くしたオルガンや声楽では解るらしい。

因みに、純正律の半音は16/15、シャープは25/24、フラットは24/25である。
平均率の場合は、半音もシャープもフラットの同一比率である。前式の=1.05946・・・・・である。

■平均律と純正律の聴き比べ

2つの調律を単純音のサインはで作ってみた。

倍率 音名 純正律周波数 平均律周波数
1 C4 264 261.6
9/8 D4 297 293.6
5/4 E4 330 329.6
4/3 F4 352 349.2
3/2 G4 396 392
5/3 A4 440 440
15/8 H4 495 493.9
2 C5 528 523.2

サンプルとしてC4とG4をリンク(周波数をクリックすると音が出ます)を取ってみたが、聞き分け出来たでしょうか。
小生には同一音程に聞こえます。
それでは、Cdurで音階に並べて見ましょう。波形はサイン波、音量は-10dB、時間は各2秒に揃えてあります。
純正律音階
平均律音階

どうでしょうか。違いが解りますか。

■和音の聴き比べ

いよいよ和音の聴き比べです。

純正律と平均律の和音を作ります。
音階でdoの音を合わせるために、基音のAを440Hzに合わせてAdurで各音階の音をサインはで作ります。
平均律の周波数は前述のによります

純正律 平均律
階名 比率 周波数 i の値 周波数
do 1 440 0 440
re 9/8 495 2 493.8
mi 5/4 550 4 554.4
fa 4/3 586 2/3 5 587.3
sol 3/2 660 7 659.2
la 5/3 733 1/3 9 739.9
ti 15/8 825 11 830.6
do 2 880 12 880

次に和音の組み合わせの音を合成します。簡単の為に良く出てくる3種類としました。

JT純正律 ET平均律
和音名 階名 周波数 和音名 周波数
JT長3度 do+mi 440 550 ET長3度 440 554.4
JT4度 do+fa 440 586 2/3 ET4度 440 587.3
JT5度 do+sol 440 660 ET5度 440 659.2

和音名をクリックすると和音が聞こえます。
どうでしょうか。違いが判別出来ますか。

筆者には平均律の和音に違和感を感じます。

長3度は歪みっぽく聞こえますし、4度、5度ではうなりが出ています。
特に5度は歪みが付いて、一瞬アンプかスピ−カーに異常を来したかと思いました。

それに対して純正律は不安無く聴けます。

比較しやすい様に純正律、平均律と5秒ずつ並べて見ましょう

和音名 純正律から平均律へ5秒ずつ連続
長3度 純正律から平均律へ
4度 純正律から平均律へ
5度 純正律から平均律へ

■解ったこと

@平均律では純正律に比して歪みっぽい音になる。
A平均律ではうなりが出る。
B音階の差は判別出来ないが、和音にすると濁りとうなりで判別出来る。
Cハモらないのは純正律と平均律の差ではなく、発声のピッチが狂っているからである。
むしろ1HZくらいの差に調節出来れば、うなりが発生するだろう。よくパート内一致するとうなりが出ると言われている。

続いて3音の和音に進もうと思いましたが、とりあえず2音で終わります。
最後までおつき合い頂いてありがとうございました

平均律と純正律へ

中澤 亨記